地方格差が生む未来予想図とニコニコ動画

昨日は朝から病院に行かなければいけなかったので珍しく朝早く起きたのだが、日テレで辛坊さんが司会をしている「ウェークアップ!ぷらす」という番組の地方の現状を伝える特集を見た。

まあ、地方の現状は小泉改革によってズタズタに切り裂かれ、ただでさえ特定の企業が鎮座していない普通の市町村は公共事業頼みの産業を否定された。さらには地方交付税補助金の削減はますます自治体を疲弊させていく。そりゃあ頑張っている所もあるけど、みんながみんなそういうように出来るわけではない。地方の給与は当然都市部よりも安く、しかし車がなければ生きていけないので車を持ち、そしてその維持費を支払い続ける。そしてそういう所の物価は都市部より安いかと問われれば決してそうではなく、都市部とさして変わらない。都市部の生活水準を達成する為に地方の人間は都市部の人間よりも高いお金を払わなくてはならない。また農業もFTAの問題も孕んでいるし、また後継者不足は少子化が進めばますます酷いものになり、かといってアメリカやオーストラリアみたいに広大な平野があるわけではないので、大規模農業で生産性を上げる事もままならない。
こんな状況でどうして地方に住もうと思うのか? 普通に考えたら若い人で高校に行ったらそのまま都市部に移住して大学ないしは就職するのではないか? 一時期のように農業がダサいとかそういう意識の問題ではなく単純に地方で生活する事が難しくなるから都市部に移住するしか生きる道が無いのだ。

なんてかなり悲観論を展開してみたりしたが、あの長期の不況を経験していた(そして今も続く)日本が選択したのは都市部への全ての集中である。竹中氏は都市部の景気が上がればそこからどんどん外側にその波は及んでいくという理論はまさにその典型だ。金ばっかりかかる地方よりも勝手に成長する力を秘める都市にお金や情報を集めるというのは方法論としてはありだろう。だが今の所、竹中氏の目論見は失敗している。
実は日本の都市志向は今始まった話ではない。もう遙か昔から行われている事で、地方分散が達成されていた時期というのは地方に有力な武将が現れた戦国時代くらいだろうか(江戸時代もその流れを汲むかもしれないが、中央による干渉があったのでここでは触れない)。幕末を経て明治時代は急激な中央集権化が進んだことは学校の歴史で学んだ事だ。
しかし、今までの都市志向と現在の都市志向は似ているようで違う。というより保証があるというべきなのかもしれないが、特に戦後の高度経済成長期においては子供は増え続けた。国が策を出さなくても子供はポンポン生まれたわけで、たとえ『金の卵』で地方から都会に就職列車で上京したって、地方にはまだ農業や鉱工業の担い手が居続けることが出来た。地方は人を都市に取られても地方には人がたくさん居続ける事が可能で、その部分で地方には成長を保証されていたのだが、現在の少子高齢化の中ではその保証すらままならないのだ。いや、その保証すらもうないだろう。

地方と都市の格差は色々な部分で溢れているが、
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1047553.html
この発言で思ったのはDVDが高すぎるとかこのDVDの売上頼みのアニメビジネスが続くか否かということよりも、ニコニコ動画のアニメ動画は地方に住む人間の救済措置みたいな側面も否定できない事実としてあるんじゃないかという事で。
上で述べたとおり地方が都会並の生活水準を達成するには都市よりもお金が必要になる。そしてそれはアニメにも言えるわけで、地方が都市部のテレビ局でやっている番組を見る場合、ほぼ100%CATVやスカパーに加入しなくてはならないだろう。場所によってはほぼ全ての世帯で入ってるなんて所もあるけど、それは多数ではない。現実的にはお金を払わなければならない。勿論都市部の場合では制作サイドがテレビ局にお金を払って放送するってのが最近のトレンドだが、私も含めた視聴者はその金を払う必要性はない。変わりに制作サイドにはDVDを買ってもらう事を期待されている。でもそれは強制ではなく各々の選択に委ねられる。これでは不公平と言われても仕方ない。最近ではネット配信で地方と都市部の格差を無くす動きがあるが、それもまだ少数派である。そもそも地方の人にはDVDを買って貰うという事をあまり期待していないのだろうか?
さてこの流れはますます強くなっている。まるで竹中氏のやったことと同じだ。勿論一企業のやる話なので慈善事業ではない事もその通りなのだが、これでは少子化が進みかつその子供もアニメを見なくなってきている昨今、地方ではアニメの本数そのものも削られてきているし、このままだと恒常的にアニメを見る人々(アニオタと言い換えてもいい)、そういう深夜アニメのメインターゲット層が増えていかなくなるのではないかと思う。短期的には利益を都市部に集中させるのは有効だが長期的に見れば利益は持続し続けるのかと問われれば甚だ疑問である。

アニメは日本が世界に誇る産業だと言われているが、果たしてこの現状を見ればそれも何か空虚な言葉にしか聞こえない。今、アニメ業界は本当に死に体だろう。